スティーブン スローマンとフィリップ ファーンバックの『知ってるつもり 無知の科学』を読みました。
人間は実はわかっていないにもかかわらずわかった気になっており、それが様々な問題を引き起こしているということを説明している本ですが、同意できる部分が多かったです。
ただ正直自分にとってはなかなか難しく理解するのに苦労しました。
読むのにも休み休み読んだので5時間くらいかかったかもしれません。
とりあえず印象的だった部分について書いておこうと思います。
世間には直観型と熟慮型の人がいるそうですがそこで考案されたのが「CRTテスト(認知反射テスト)」です。
見たことのある方もいるかもしれませんが次のような問題です。
問1 バットとボールで合計1ドル10セントである。バットはボールより1ドル高い。ボールはいくらか。
いかがでしょうか。このときボールは10セントであると思われる方も多いかと思います。
たいていの人は10セントと答えるそうです。(名門大学の学生も含めて。)
ボールが10セントの場合、バットはそれより1ドル高いので1ドル10セントとなります。
合計すると1ドル20セントです。
直観的反応としてボールが10セントであると考える方がほとんどですが、この回答を確認する人も少ないながら存在し、そうした人は10セントは誤りであると気付くそうです。
こうした確認し、気が付く人を「内省的」と呼び、直観的反応を抑制し、回答する前に熟慮する傾向があるとのことです。
他の問題も載せておきます。
問2 湖面にスイレンの葉が並んでいる。その面積は毎日2倍になる。48日で湖面全体がスイレンの葉で覆われるとすると、湖の半分が覆われるまでには何日かかるか。
こちらは大多数の人は「24日」と回答するそうです。
正解は47日です。
スイレンでいっぱいになる前日には半分覆われています。
48日の1日前は47日ということですね。
問3 5台の機械を5分間動かすと、製品が5つできる。100台の機械で100個の製品を作るには何分かかるか。
これらの3つの問題に共通するのは誤った答えがパッと思い浮かぶというところです。
正解を導きだすには直観的回答を抑制し、少し計算してみる必要があります。
ですがたいていの人はそんな手間をかけません。
これら3つの問題を正当するのはアメリカ国民の20%に満たないそうです。
CRTは答える前に熟慮する人と思いついた答えをそのまま口に出す人を区別します。
内省的傾向の強い人はじっくりと考える一方、そうした傾向の弱い人は直観に頼るそうです。
ちなみに内省的傾向の強い人の方がリスクをとることに前向きで、衝動的ではありません。
一般的にリスクをとったり、少し待つことで報酬が増えるのであればそうする傾向があるそうです。
投資をしている方は内省的傾向が強い方が多いのではないでしょうか。
もう一つ印象的だった点を挙げておきます。
科学に対する意識は、エビデンスに対する合理的かつ公平な評価に基づくものではない
進化論は間違っているといったことを間違っていると信じている人にいくら説明しても、間違っているという考えが変わらなかったという実験結果があるそうです。
これはどういうことかと言いますと、信念とは個別に取り出したり捨てたりできるようなバラバラなものではなく、他の信念や共有された文化的価値観、アイデンティティなどと深くかかわっているからです。
特定の信念を捨てることは他のさまざまな信念も一緒に捨てること、コミュニティと決別すること、信頼する者や愛する者に背くこと、要するに自らのアイデンティティを揺るがすことに等しいそうです。
つまりその人が属するコミュニティでは進化論が間違っていると考えられており、その信念だけを訂正することはできないということですね。
セミリタイアについても同様です。
おそらくあなたがセミリタイアをしたいと言っても周りの人は働かなければいけないという信念を持っておりその考えを変えることはまず無いでしょう。
セミリタイアを目指すのならばコミュニティをすべて断ち切るくらいの強い意志がなければ実行できないかもしれないということをこの本は示唆しています。
別に本の中でセミリタイアを推奨しているわけではありませんが(笑)
他にもなかなか興味深い話が載っていましたので興味のある方はぜひ目を通してみてはいかがでしょうか。
答え
問1 5セント
問3 5分